東京地方裁判所 平成12年(ワ)11416号 判決
原告 斉藤隆
被告 デイテイエム株式会社
右代表者清算人 ラリー・ディー・ハンター (旧商号 株式会社ディレク・ティービー)
被告 ディレク・ティービー・ジャパン株式会社
右代表者代表取締役 池貝庄司
右被告ら訴訟代理人弁護士 平川修
右同 古田啓昌
右同 庭野議隆
右訴訟復代理人弁護士 佐藤香織
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一請求
一 被告らは原告に対し、一一二万九四〇〇円及びこれに対する平成一二年六月一三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 訴訟費用は被告の負担とする。
三 仮執行宣言。
第二事案の概要
一 事案の要旨
本件は、被告株式会社デイテイエム(旧商号株式会社ディレク・ティービー、以下「被告DTV」という。)あるいはディレク・ティービー・ジャパン株式会社(以下「被告DTVJ」という。)とCSデジタル有料放送サービス契約を締結していた原告が、被告らがその放送を打ち切ることになったため(実際に平成一二年九月末日をもって有料放送サービスを終了した)、被告らの放送を受信するための専用アンテナ、専用チューナー及び加入料が無駄になったとして、債務不履行あるいは不法行為に基づき、右代金相当額の賠償及び慰謝料を求めた事案である。
二 原告の主張
原告は、平成一〇年一〇月に、被告らの有料放送を視聴するため、被告らと有料放送サービス契約を締結し、被告DTVに加入したが、わずか二年で放送が打ち切られることが予めわかっていれば、被告DTVに加入することはなく、したがって専用のアンテナ及びチューナーを購入することもなかった。
また、被告らの一方的な放送打ち切りにより、原告は精神的苦痛を被った。
三 被告の主張
原告と被告DTVとの間にはなんら契約関係はなく、原告とCSデジタル有料放送サービス契約を締結したのは各委託放送事業者のために同人らを代理する被告DTVJである。したがって、被告DTVJ放送分の有料放送サービス契約については、被告DTVJ自らサービスを提供する義務があるが、他の放送に関しては各委託放送事業者にサービス提供義務がある。
原告と各委託放送事業者との間の契約においては、各委託放送事業者がCSデジタル有料放送サービスを提供することが客観的に不可能な事態が生じた場合には、放送サービス契約は終了するものと定められている。ここに定める有料放送サービスを提供することが客観的に不可能な事態には、各放送事業者の収益状態の悪化及び経営判断により放送を終了する場合を含むと解される。したがって、被告らの放送終了にはなんら違法は存在しない。
第三判断
放送の公共性に鑑み委託放送事業を行うには免許が必要とされるなどの法規制がされており、放送の開始、終了については、右の法規制上の制約がある。しかしながら、委託放送事業者においても種々の理由から放送の継続が不可能となるやむを得ない事態が生じることは避けがたいのであり、このような場合のために約款上CSデジタル有料放送サービスを提供できないことがあることを前提とした規定(甲一、二一条二項)を設けており、この約款の規定は特段の事情のない限り、各委託放送事業者と契約視聴者との間の契約として効力を有すると解される。
そして、被告らがディレクTVの名称で被告DTVJを含めた各委託放送事業者のために広く契約視聴者を募集していたこと、また被告DTVJを含めた各委託放送サービスを受信するのには専用のアンテナ及びチューナーが必要であること、放送打ち切りにより、被告DTV専用のアンテナ及びチューナーが無駄になること、今回の放送打ち切りが、被告らの経営上の都合によるものであることが明らかである(弁論の全趣旨)。このようなCSデジタル有料放送サービス契約の性質に鑑み、放送打ち切りの理由が、委託放送事業者あるいはこれを代理する者の一方的な理由である場合には、契約者に対し常に債務不履行を構成しないと解すべきではなく、相当な代替措置を講じたか否か、契約者に発生する損害の額、契約期間等を考慮した上で、正当化されるか否かという見地から判断されるべきであると考える。
右の観点から本件の放送打ち切りについて検討すれば、被告らにおいてスカイパーフェクTV!への移行措置を提供し、その加入料、スカイパーフェクTV!専用のアンテナ及びチューナーを無料で配布設置する代替措置を講じており、代替措置としては相当なものであり、これにより放送打ち切りは正当化されるものと考えられる(乙二号証の一ないし四、乙三号証の一ないし五、乙四号証)。もっとも、このような代替措置をとっても、スカイパーフェクTV!への移行を希望しない者にとっては、DTV専用チューナー及びアンテナが無駄になることの損害は償われないが、これはやむを得ない損害として甘受すべきである。特に原告の場合は、弁論の全趣旨によればすでに別途スカイパーフェクTV!に加入していたことが認められ、右のような代替措置はなんら有益なものとは認められないことになるが、これは原告がたまたま既にスカイパーフェクTV!に加入していたことにより発生した事態であること、原告にとっては契約後約二年を経過した後の放送打ち切りであり、その間は契約者としての利益を享受してきたと認められることに加え、専用チューナー及びアンテナの価格をも考慮すれば、被告らの放送打ち切り措置は原告に対し、債務不履行とはならないと解すべきである。
また、被告らの放送打ち切り措置が不法行為を構成するものとも認められない。
よって、原告の被告らに対する主張は理由がないので棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 金子修)